生活リズムを朝型に切り替えるために、数多の試行錯誤を経て、私が辿り着いたベストプラクティスである。 この手順の通りにやれば明日から朝型に切り替えることができるだろう。
注意事項
- 睡眠導入剤は使わない。精神的なものが原因の場合は、今回紹介する手法は通用しない。
- 早起きに切り替える日は寝不足になるので、自動車運転などの安全性・正確性が求められる行為はしない。
意識しておきたいこと
なぜ朝型に変えたいか
人生を豊かにするためだ。 早起きすると時間に余裕が生まれる。 時間に余裕があると心に余裕が生まれる。 心に余裕があると人生に余裕が生まれる。
例1: 朝10時に打ち合わせがあるとしよう。1
- 朝8時に目覚めたら残り2時間。身支度と移動で時間を使い切ってしまう。
- 朝6時に目覚めたら残り4時間。事前に資料に目を通したり、気掛かりな別件を片付けることもできる。
例2: 朝の30分で自己投資ができる。
- 研究者なら論文を執筆する時間にできる。アクセプトが多い研究者は執筆量自体が多く、定期的な作業時間を設けることが鍵だ、という主張もある。
- 新しいスキルを身につける時間にできる。工夫によっては20時間でそれなりのアウトプットを出せるようになる。毎日30分なら1.5ヶ月で成果が出る。
なぜ他の時間帯ではなく朝に自己投資をするのか。答えは簡単だ。 「後で今日の分をやらなければ」と焦りながら1日を過ごすのではなく、「既に今日の分はやり終えた」という充実感を伴って1日を過ごせるようになるからだ。 前向きな気持ちで過ごせるようになるからだ。
何が早起きを阻害するのか
寝坊は繰り返す。 遅く起きるとその日はなかなか夜に寝付けない。 そして結局翌朝も遅く起きることになる。
体内時計の仕組みとして必然的にそうなる。 起床して目に強い光を取り入れたタイミングから一定時間後に睡眠誘発物質が分泌されるためだ。
朝型に切り替えるためのキードライバー
何が何でも1度早起きをする。 身も蓋もない話だが、これが全てである。 個人的な経験則だが、眠くないときに眠るよりも、多少の睡眠不足でも頑張って起きるほうが実現性は高い。
体内時計がリセットされるのは、起床して目に強い光を取り入れたタイミングだ。 そのため朝の早い時間に光を浴びることがキードライバーとなる。
寝坊を繰り返すのと同様に早起きもまた循環する。 早く起きると、その分だけ夜早い時間に眠くなる。 早く眠って、そしてまた翌朝早く起きる。この繰り返しになる。
これは朗報だ。 遅い時間に入眠して、無理やり早起きした日は寝不足状態となる。非常に辛い1日になる。 しかし、その1日を乗り越えれば、自然と早起きサイクルに切り替えることができるのだ。
# 手順リスト(前日編)
NOT-TO-DO: 前日にやらないこと
- 昼寝・仮眠。
- 理由:夜に寝付けなくなるためだ。
- 酒の大量摂取。
- 理由:個人差はあるが私の場合は頭が痛くなって夜に寝付けなくなる。
TO-DO: 前日(昼)にやること
- ペットボトルの水を買う。
- 理由:起きてすぐに水を飲めるように枕元に置くためだ。
- しっかりと食事を摂取する。
- 理由:お腹が空いて夜に眠れないという事態を防ぐためだ。
- 有酸素運動。ランニング、サイクリング、水泳あたりが良いだろう。できれば1時間は運動を続けたい。
- 理由1:体を疲れさせるためだ。
- もともとが運動不足なら、これだけで寝つきが良くなるだろう。早く寝れば早く起きやすくなる。
- 理由2:発汗しやすい身体にするためだ。
- 体内温度を下げることで人体は眠りにつく。発汗による体温低下を昼間のうちに身体に練習させておく。入眠しやすくなる。
- 目がさめたときに汗で身体がベトベトして気持ち悪くなるので、翌朝すぐに布団を出てシャワーを浴びたくなる。布団から出やすい状況を作る。
- 理由3:血流の巡りを良くする。
- 起床後に体温を上がりやすくする。寒いと布団に包まりたくなるが、暑いと布団から外に出たくなる。布団から出やすい状況を作る。
- 頭に血が巡ると目覚めやすくなる。熱いシャワーを浴びると目が覚めるのと同じ。布団から出やすい状況を作る。
- 理由4:頭や心ではなく身体で動けるようにするためだ。
- 1時間も運動していると、後半は無心でひたすら動き続けることになる。翌朝は寝不足状態のため、頭で考える余裕はない。無心で淡々と作業を進めることになる。ゆえに無心で淡々と動くことに慣れておく必要がある。
- 理由1:体を疲れさせるためだ。
TO-DO: 前日(夜)にやること
- アラームをセットする。できれば専用アプリを使う。iOSのオススメは「Sleep Meister」というアプリだ。眠りが浅くなったタイミングで大音量のアラームを流してくれる。
- 窓の外から太陽光がちょうど目に当たるように布団(ベット)・枕・カーテンの位置を調整する。
- 理由:目覚めるためには外の光が必要不可欠だ。太陽光は100,000ルクス、曇りや雨でも5,000〜10,000ルクスとなる。室内照明はたったの500〜1,000ルクスなので、圧倒的に光の強さが違う。眩しくて自然に起きる、という状況を予め作っておこう。
- エアコンで適温にしておく。起床予定の30分前にエアコンを切るようにタイマーをセットする。
- 理由1:適温にすることで、暑くて(もしくは寒くて)眠れないという状況を避ける。入眠しやすくなる。
- 理由2:起床30分前にエアコンが切れることで、夏場は暑く、冬場は寒くなる。30分もあれば暑すぎて(もしくは寒すぎて)強制的に目がさめる。
- ペットボトルの水を枕元に置いておく。
- 理由:朝起きたらすぐに飲めるようにしておく。水を1杯飲むだけでも頭に血が巡って目が覚めやすくなる。
- 風邪薬や漢方薬を服用する。オススメは葛根湯。
- 理由:睡眠不足、エアコン付けっ放し、そして温度の急変化など、体調を崩しやすい要素が揃っているので、先に薬を飲んでおく。プラシーボ効果でも十分だ。
- 翌日の荷造りをする。
- 理由:せっかく早起きしても家でじっとしていたら二度寝したくなってしまう。翌日は丸1日を外で過ごすのが望ましい。翌朝は寝不足状態なので、荷造りのような知的作業は困難だ。事前に用意しておこう。翌日はカフェでスマホをいじるくらいしかできないので充電器は持っておきたい。着る服も前日のうちに整えておこう。
手順リスト(当日編)
NOT-TO-DO: 当日にやらないこと
- 二度寝。これだけは絶対にダメ。絶望への片道切符。きちんと起きて外に出ないと、体内時計をリセットできない。
- 過剰な昼寝。横になって眠ってはいけない。30分以上眠ってもいけない。寝入ってしまい、夜に寝付けななくなる。それでは早起きサイクルに切り替わらない。
TO-DO: 当日(朝)にやること
- 布団から出る。
- 耳:前日の準備が完璧ならば、眠りが浅いタイミングでアラートが鳴り響く。
- 目:前日の準備が完璧ならば、太陽光で目が覚める。僅かな理性で目を大きく開き、光を取り込もう。体内時計をリセットするように身体に指示しよう。
- 肌:前日の準備が完璧ならば、部屋の暑さ(あるいは寒さ)と発汗で、身体中が気持ち悪くなる。本能が命じるままに布団から出よう。
- 口:前日の準備が完璧ならば、発汗で喉はカラカラのはず。目の前にはペットボトルの水。本能が命じるままに水を飲もう。頭に血が巡って目が覚めるだろう。
- シャワーを浴びる。
- 発汗で身体はベトベトのはずだ。本能が命じるままにシャワーを浴びよう。
- 少し熱くなるように温度を調整しよう。頭に血が巡るのが分かるはずだ。
- 布団を畳む
- 前日の有酸素運動と、浴びたばかりの熱いシャワーで、シャワーから出たあとも身体はすぐに汗をかくはずだ。そんな状態では布団にもう戻れない。仮に布団に入っても暑すぎてすぐに出たくなるだろう。汗が引いたときに二度寝しないように布団を畳もう。
- 家から出る。
- 前日の準備が完璧ならば、着る服や持っていく荷物は揃っている。無心で身支度を行って、さっさと外に出よう。
- 外に出たら目を大きく開けて光を取り込み、家から離れよう。
- 室内と室外で太陽の光の強さは約40倍ほど違う。外に出て光を浴びることで体内時計を完全に朝型に切り替えることができる。
- 家にいると二度寝や昼寝を許しがち。家に帰るのは夜だ。それまではオフィスやカフェで時間を潰そう。
TO-DO: 当日(昼・夜)にやること
- 昼を乗り越える。
- 高度な知的作業はできないだろう。かといって寝不足で身体を動かすのは危険だ。カフェでスマホをダラダラと眺めるくらいしかできないだろう。あるいは漫画喫茶でコミックを一気読みするとかね。たまにはそんな日があっても良いじゃないか。
- 何度か耐えがたい眠気に襲われるはずだ。そのときは10分だけタイマーをつけて、机に伏す形で仮眠を取ろう。それだけでも睡眠誘発物質の分泌は抑制できる。
- 22:00まで粘ってから帰宅する。
- 帰宅したら、きっと睡魔には勝てない。つい布団に横になってしまうだろう。帰宅時間を通して入眠時間を調整するのだ。22:00以降に眠るように調整しよう。22:00以降に入眠することで、次の起床が日の出に近付い時間となるように調整できる。2
- 夜に帰宅したら、あとは本能が命じるままに眠りにつこう。翌朝きっと早く起きられるはずだ。
おわりに
生活リズムの運用・保守
早起きサイクルに1度切り替えたからといって、仕事や趣味で徹夜が続けば、また生活リズムは狂ってしまう。 戦いは果てしなく続くのだ。
- 事前予防策:なるべく徹夜をしない。朝に出来ることは朝にやろう。計画を立てて行動しよう。
- 事後対応策:同じように1日寝不足を覚悟して、早起きに切り替える。
胸に手を当てて自分の生活リズムを見直してほしい。 言い訳をしたくなる時もあるだろう。仕方のない時もあるだろう。夜型でいいやと思考停止したくもなるだろう。
だけどもし「朝型に切り替えられたらもっと上手くいくのに」と、心のどこかで少しでも思っているならぜひ挑戦し続けてほしい。 自分の弱さを認めた上で、失敗を繰り返した上で、それでも諦めずに生活を改善し続ける強さを持ってほしい。 日々の生活を改善するということは、きっと自分の人生を自分でコントロールするための第一歩なのだと思う。
参考文献
- 池田千恵『「朝4時起き」で、すべてがうまく回りだす! (PHP文庫)』
- 坪田聡『脳も体も冴えわたる 1分仮眠法』
- 内山真『睡眠のはなし - 快眠のためのヒント (中公新書)』
- ポール.J・シルヴィア『できる研究者の論文生産術 どうすれば「たくさん」書けるのか (KS科学一般書)』
- ジョシュ カウフマン『たいていのことは20時間で習得できる 忙しい人のための超速スキル獲得術』
追記
2020年7月現在、私は完全な朝型になっている。 毎日5時台には目が覚めて、7時台には仕事に着手している。
(誠に残念なことに)最も効果があった施策は「仕事で朝が早い人と一緒に暮らすこと」だった。 独り身の方は生活を共に改善していける素敵なパートナーを探してみてはいかがでしょうか。
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まぁ私は午前に打ち合わせを入れないようにカレンダーでブロックしているのだが。WEB業界は出社が遅い風潮がある。だからこそ人が少ない午前は個人ワークが捗るし、誰かが寝坊してミーティングがグダグダになるような事態を避けることができる。「午前の打ち合わせNG」ルールは長いこと運用を続けているが、自分でも驚くほど上手く回っていると思う。↩
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レム睡眠・ノンレム睡眠は1.5時間周期のため、入眠から起床まで6時間〜7.5時間が望ましい。22:00になる前に眠ってしまったら夜中の3時台に目覚めることになる。この時間に起きてしまうと次の入眠がさらに早まって「どんどん起きる時間が早くなる悪循環」に陥る。かといって二度寝をすると、寝すぎで翌日の日中は頭が動かず、夜になって目が冴えてしまって、結局眠れないサイクルに戻ってしまう。だからこそ22:00以降の入眠を目標にするのが望ましい。↩