下町柚子黄昏記 by @yuzutas0

したまち発・ゆずたそ作・試行錯誤の瓦礫の記録

自分自身のパフォーマンスをチューニングするプラクティス

某所のビブリオバトル(書評合戦)にて「いかに自分自身のパフォーマンスをチューニングするか」という話をしました。

スライド

社内ISUCONに参加する前にチューニングすべきもの

概要

『メンタル・タフネス』という書籍の紹介になります。

成功と幸せのための4つのエネルギー管理術―メンタル・タフネス

成功と幸せのための4つのエネルギー管理術―メンタル・タフネス

著者は元々アスリートトレーナーで

  1. 高い成果をあげるアスリートとそうでないアスリートの違いを分析した
  2. アスリートの成功パターンはビジネスパーソンにも当てはまることが分かった
  3. ビジネスパーソン向けのトレーニングメニューを構築・運用してきた

これらの活動で得た知見を書籍にまとめたとのことです。 いわば「人生のSRE本」として読むと興味深いものがあります。

ビブリオバトルの経緯

社内勉強会のLT枠で話しました。

  • 会のテーマは「社内ISUCON」:ISUCONというのはシステムのパフォーマンスチューニング大会のことです。一般公開せずに社内で実施したので社内ISUCONと呼称しています。
  • LTの形式は「ビブリオバトル」:オススメの1冊を数人が紹介しあって、リスナーの投票で1位を決める書評合戦のことです。

これらを踏まえて「自分自身のチューニング」というコンセプトで書籍紹介に至りました。

というのも、私たち1人1人の人間についても「1つのシステム」と見なせるからです。

  • そのシステムが最高のパフォーマンスを発揮するには何が必要か。
  • そのパフォーマンスを安定的・継続的に発揮するには何が必要か。

本質的にはシステムチューニングと同じことだと考えています。

なぜセルフマネジメントが大事か

この「自分自身のチューニング」(=セルフマネジメント)が必要になってくるのは、特に以下の2点においてです。

  1. 個人として自分のパフォーマンスを最大限に発揮するため:自分でセルフマネジメントをする
  2. リーダー・マネージャーとしてチームメンバーのパフォーマンスを最大限に引き出すため:他人のセルフマネジメントを促す

楽しいことをより多く楽しむためにも、嫌いなことを素早く片付けるためにも、パフォーマンスが良いに越したことはありません。 楽しいことをより多く楽しみ、嫌いなことを素早く片付けられるようになると、ポジティブな流れが生まれてきます。 少し大袈裟かもしれませんが、セルフマネジメントは人生を豊かにするツールの1つではないかと思っています。

もくじ

自分自身をチューニングするための3つのポイント

この書籍から学べることを強引にまとめると、以下3つのポイントとなります。

1: 時間管理よりもエネルギー管理

  • 細かいスケジュールを組んでも、どうにも調子が出ないまま時間が過ぎてしまう。よくある話です。
  • 一方で、なかなか進まなかった仕事なのに、いざ集中してみると1時間で片付いた。これもよくある話です。
  • 結局のところ、どれだけメンタルのエネルギーを注げるかが重要なのです。

2: メンタルのエネルギーは筋肉と同じ特徴を持つ

  • 筋肉と同じように、メンタルは酷使すれば疲労します。1度集中して疲れた状態のまま、また集中しようとしても難しいでしょう。
  • 筋肉と同じように、メンタルは負荷を掛けないと衰えます。楽な方向に逃げてばかりいると、いざ頑張ろうとしても頑張れないものです。
  • なので、無理のない範囲でメンタルに負荷を掛ける → メンタルを回復させる → 徐々に大きな負荷を掛ける:この繰り返しでメンタルは強化されます。
  • この特徴を踏まえてトレーニングメニューを組むことで「メンタル・タフネス」を実現できます。

3: メンタルのエネルギー管理は4つのバランスで成り立つ

メンタルのエネルギーは4つの観点によって構成されます。

  1. 身体:(例)行き詰まったときに走ってみると調子が良くなる
  2. 頭脳:(例)久々に本を読んでみると頭がすっきりする
  3. 情動:(例)家族からのサプライズなど、感動するような出来事があるとポジティブな気持ちになる
  4. 精神:(例)些細なことでも「自分はこのために生きているんだ」と思えるとモチベーションが湧き出る

※ちなみに「情動」と「精神」は違うものです。「情動」は忍耐・共感・自信といった要素で、他者や自然や文化との繋がり(≒優しさ・慈しみ)に関連します。一方で「精神」は使命感・価値基準といった要素で、自己の中にある価値観(≒正しさ・誇り)に関連します。書籍ではキリスト教徒を例にとって礼拝や地域ボランティアが精神的活動に当たると説明しています。

4つの観点から自分の調子をモニタリングする

上記の分類は自己パフォーマンスを見直す参考になります。 例えば、現代人の生活を想定するとこのようにマッピングできるでしょう。 ※主観で書いているので個人差はあります。

  • 身体
    • 酷使している:食事・栄養(高カロリー)、眼精疲労、腰や肩に負荷が掛かる姿勢
    • 不足している:食事・栄養(野菜不足)、水分補給(水)、睡眠不足、有酸素運動やストレッチの不足
  • 頭脳
    • 酷使している:スマートフォンやPCでの文書作成、インターネット上の動画・画像・テキストなどのコンテンツを流し読み
    • 不足している:知らない分野に関する読書、頭脳ゲーム、複雑な数式の計算、丁寧に文字やスケッチを書く
  • 情動
    • 酷使している:学校や職場での人間関係への配慮、キュレーション済みの感動コンテンツ
    • 不足している:家族や友人に感謝を伝えるようなイベント、映画や芸術作品を見る、旅行先で自然を感じる
  • 精神
    • 酷使している:今やっていることにどんな意味があるのかと悩む時間
    • 不足している:将来やりたいことのために今出来ることに集中する時間

なんとなく調子が悪いなと思ったときには、これらのバランスが崩れているときです。

負荷が強すぎる・酷使しているポイントについては、しっかりと休めることで回復させましょう。 負荷が弱すぎる・不足しているポイントについては、しっかりと補うことで強化させましょう。

ということで、書籍では4つのバランスを保つためのトレーニングメニューが細かく提示されています。 ただ、トレーニングメニューの各論については1人1人向き・不向きがあるはずです。 色々と試行錯誤して自分にあったスタイルを構築することになるでしょう。

私のライフハック

色々と関連書籍を読んだりライフハック的なことを試しています。

1. 身体

1-1. 睡眠:朝に光を浴びる

睡眠不足については『睡眠のはなし』という書籍が良かったです。

  • そもそも睡眠とは何か
  • どういうメカニズムで動いているのか
  • そのメカニズムのどこにどういう影響が生じて睡眠不足になるのか
  • どのようにしたら効果的に眠りにつけるのか

といったことが説明されています。

個人的に重要だと感じたのは「朝早くに太陽の光を浴びること」です。 曇りや雨の日でも空を見ること、寝不足であっても朝に起きることがコツです。 朝1番に体内時計をリセットできれば、夜にきちんと眠りにつけるようになり、快眠サイクルが回り出します。

理想としては、朝の日光が顔に当たるように窓・カーテン・ベッドを上手いこと配置できると、全てが自動化されて最高です。 まぁ、日の出の時間や太陽の角度がちょっとずつズレるので、これはこれでチューニングが手間ですが。

1-2. 疲労感:芯とセンサーを意識する

首・肩・目の疲れについては『「疲れない身体」をいっきに手に入れる本』を参考にしています。 この本では、身体の疲労を「芯」(バランス・重心)と「センサー」(五感)という概念で説明しています。

  • 例:座ったときの姿勢が悪い=体の芯がブレている → 足腰に掛けるべき負担が、首や肩に掛かっている → だから首や肩が凝る
  • 例:ディスプレイと顔が近い=センサー(目)に意識が傾いている → 遠目で(脳で)画面全体を把握してから細部を読むべきなのに、目だけで情報を処理しようとする → だから目が凝る

「芯」と「センサー」のどこに負荷が掛かっているのかを認識できるようになると、チューニングのポイントが見えてくるので、ストレッチやマッサージ(事後対応策)にも、姿勢の矯正(事前予防策)にも役立ちます。

1-3. 運動:走り方を工夫する

運動不足解消と言って真っ先に思いついたのが「走ること」でした。 いくつか比較したところ『金哲彦のマラソン練習法がわかる本』が良かったです。

以下のような練習メニューと、その組み合わせ方が紹介されています。

  • WALK:早めに歩く。脚の筋力を維持したり、フォームチェックに用いる。
  • JOG:呼吸を意識しながらゆっくり走る。有酸素運動での体力強化、疲労回復、体調整備。
  • LSD:長い時間掛けてゆっくり走る。有酸素運動での体力強化。
  • レースペース走:一定のペースで走り続ける。ペース管理の感覚を養う。
  • WS:早めに駆け抜ける。フォームを広げたり、スピード感覚を養う。
  • ビルドアップ走:徐々に加速する。心肺能力を高める。
  • ダッシュ:緩い坂をダッシュする。筋力をつける。
  • クロスカントリー:自然の地形を走る。筋力、心肺能力、バランス感覚を養う。
  • 休養:体を動かしてほぐす。もしくは完全に休める。

むやみに走るのではなく、最初はWALKから始めて足腰を鍛えたり、3日に1度は休んだり、目的に応じたメニュー設計が重要です。 中途半端に我流で組み立てて怪我をするのもよろしくないので、こういった書籍を1冊読むのはアリかなと思います。

2. 頭脳

頭を使わないといけないのに集中できない。どうするか。 色々試した結果

  • あれもこれも考えてしまうなら「10分の瞑想」をする
  • ぼーっとするなら「10分の仮眠」を取る

これがベスト対応という結論に至りました。

2-1. 瞑想:10分間だけ何もしない

瞑想のやり方が分かる書籍としては『マインドフルネス瞑想入門』が、もっともシンプルかつ実践的だと思います。

  • ざっくり言うと、何もしないで10分間呼吸に専念するだけです。
  • 自然と考えが浮かんでくるので雑念にラベルを貼って流していきます。例えば「上司への愚痴」とか「旅行への欲求」とか。
  • 10分間になんども同じ思考を繰り返していることに気付きます。SRE的に言うと「心のToil」です。
  • 慣れてくると「また自分は同じことを考えている」と気付けるようになって、思考の暴走を抑制できるようになります。

実際にやってみると想像以上に脳内をリフレッシュできます。 座り方や手の形には流派があるようですが、私の場合は剣道や柔道の黙想に慣れていたので、そのやり方を踏襲しています。

~1日10分で自分を浄化する方法~マインドフルネス瞑想入門

~1日10分で自分を浄化する方法~マインドフルネス瞑想入門

2-2. 仮眠:10分間だけ眠る

仮眠については『1分仮眠法』を読みました。 睡眠の解説は「1.身体」でご紹介した書籍と重複するのですが、より仮眠に特化した内容となっています。 例えば以下のようなTipsが紹介されています。

  • 理想は20分:それ以上だと本格的に眠ってしまう
  • 横にならない:同じく本格的に眠ってしまう
  • 昼過ぎがベスト:朝に太陽光を浴びた場合、日中の眠気ピークが昼過ぎに来るのでそこに合わせる

昼の仮眠によって午後のパフォーマンスが上がるわけです。 午後は1日の半分です。それが続けば1年の半分です。最終的には人生の半分と言っても過言ではないわけです。 そう考えると海外の昼寝文化(Siesta)は良いなぁと思っていて、私もなるべく昼に休むようにしています。

脳も体も冴えわたる1分仮眠法 (だいわ文庫)

脳も体も冴えわたる1分仮眠法 (だいわ文庫)

2-3. ペン習字:たまには文字を書いてみる

ついついスマートフォンを見てしまうと、単調なコンテンツの大量消費で頭が疲れてしまいます。 そこで最近はスマホを置いてじっくりと『30日できれいな字が書ける ペン字練習帳』に取り掛かっています。

ペン習字を選んだ理由としては、字を書く機会が最近増えているからです。 ホワイトボードでの打ち合わせ。iPad + Apple Pencil + Noteshelf2 での資料作り。 手書きによるリアルタイム図解は生産性が跳ね上がるのでオススメです。

さてこのペン習字ですが、いざ始めてみると大変です。「あ」を9回書くだけで最初は20分も掛かりました。 自分の字とお手本のどこがズレているかを分析して「次はここに気を付けよう」と書き直して、またズレを分析して。 このように丁寧に進めると、全然進まないのです。自分が普段どれだけ雑に文字を書いていたか思い知りました。

イラストレイターやフォトグラファーには同じ話が伝わると思います。 デッサンやカメラ撮影で鍛えられる「観察力」は、スマホでコンテンツを享受するのとは違った頭の使い方です。

観察とは何か?デザインにどう活きるのか?|こばかな @kobaka7|note(ノート)

30日できれいな字が書けるペン字練習帳 (TJMOOK)

30日できれいな字が書けるペン字練習帳 (TJMOOK)

3.情動

3-1. 人間関係をハックする

人間が社会的な生き物である以上、人間関係は避けて通れません。 トラブルの度に悩んだりストレスを溜めてしまうと負荷が大きいので、仕組みを理解してハックしていきましょう。

まずは営業研修の題材にもなっている『ソーシャルスタイル仕事術』です。 ざっくりと相手を4種類に分類してみて、その特徴に合わせた対応方法を変えると話を円滑に進めやすいよ、という話です。 相手と自分の特徴の違いを踏まえて、相手の視点に立ってコミュニケーションを取るための足掛かりになります。

苦手なタイプを攻略するソーシャルスタイル仕事術

苦手なタイプを攻略するソーシャルスタイル仕事術

お次が『アンガーマネジメント 怒らない伝え方』です。 私は不満を内に抱えるのではなく、外に叩きつけるタイプです。 このタイプの場合、イラっとしたときに、なぜイラっとしたのかを踏まえて冷静に話すスキルが求められます。 「なんでこうしてくれなかったのか!」ではなく「次からはこういう点を考慮してくれると嬉しい」と伝えるスキルです。 ちなみに逆パターンは不満を抱え込んでしまうタイプで、そういった方向けのトレーニングも書かれています。

アンガーマネジメント 怒らない伝え方

アンガーマネジメント 怒らない伝え方

また、組織にいると縦横斜めの人たちと上手くやっていかなければならないので

  • 全体的な勘所は『はじめての課長の教科書』
  • 先輩・上司に対する不満を感じるなら『部下力 - 上司を動かす技術』
  • 後輩・部下に対する不満を感じるなら『部下育成の教科書』

このあたりは読んで良かった本です。

  • 立場が違えど相手も同じ人間だ
  • 相手が置かれている立場上こういう言動をしやすいのだ
  • 彼らと良い関係を築くにはこういうコツがあるのだ

ということを学べます。

新版 はじめての課長の教科書

新版 はじめての課長の教科書

部下力―上司を動かす技術 (祥伝社新書)

部下力―上司を動かす技術 (祥伝社新書)

部下育成の教科書

部下育成の教科書

なお、恋人や配偶者との付き合い方については『The 5 Love Languages』(邦訳:愛を伝える5つの方法)が世界的に有名な1冊です。 アメリカ滞在時にマッチメイカー(結婚相談所)の経営者に教えてもらった本で、流し読み程度ですが目を通しました。 愛情は形で示さないと伝わらないということ、愛情を示す方法は5つに分類されるということを学べます。 某掲示板の "妻に「愛してる」と言ってみるスレ" みたいな取り組みが大事ですよという話です。

The 5 Love Languages: The Secret to Love that Lasts

The 5 Love Languages: The Secret to Love that Lasts

愛を伝える5つの方法

愛を伝える5つの方法

3-2. アニメーション x 映画

手っ取り早く前頭葉を刺激するなら読書&映画だ!という発想のもとでの取り組みです。 クリエイターの生き方や思想を知った上で、その映画をAmazonプライム動画で視聴するという楽しみ方です。

1つ目は、宮崎駿氏のインタビューまとめ『風の帰る場所』を読む → ジブリ映画を視聴する。 時代ごとに主張・価値観が変わっていき、作品に反映されていくのが見て取れます。

  • 風の谷のナウシカ』では現代社会(熱を失った大人たち)に対する拒否感が表現されており
  • 『耳をすばせば』では「この街で(=この世界で)生きていくしかない」という考えに移ろい
  • もののけ姫』では「人間を許すことはできない」「それでもいいから一緒に生きよう」という前向きな立場を明示しています

個々の制作秘話も興味深いです。例えば『千と千尋』のクライマックス。電車で佇んでいるだけのシーン。 ハリウッドなら、カオナシの暴走でピンチになった両親を主人公が助けて感動の再開で終わる。でもそうじゃない。 少女が初めて自らの意思で遠くに向かう(=電車に乗る)という精神的なクライマックスを描画する。 アクションではなく音楽と風景で精神的なクライマックスを描画している。そういえば『君の名は。』も似ているかも。

2つ目は『創造の狂気 ウォルト・ディズニー』で、ウォルト氏の徹底的な現実逃避が見て取れます。

勉強が嫌になって演劇やイラストに没頭したからこそ、ユーモラスな表現ができる。 都市が嫌になって田舎に憧れたからこそ、古き良きアメリカを描画できる。 現実が嫌なことだらけだからこそ、空想の世界を徹底して追求できる。 だからこそ、1930年代の不況で閉塞感に包まれていた人々の心を掴み、作品がヒットしたわけです。

象徴的な作品が、ディズニー初の長編アニメーション作品『白雪姫』です。 7人の小人のキャラクター設定に2年間を費やしており、恥かしがり屋だとか、意地っ張りだとか、小人の性格は一目見れば違和感なく把握できるようにデザインされています。 また、森の動物が白雪姫の家事を手伝うシーンは、まさに自然と子供の触れ合い(=郷愁)を描画しており『シンデレラ』などの後続作品でも似た場面が登場します。

ちなみにウォルト・ディズニー氏の現実逃避は徹底しており、口うるさく言われてアニメーションを作るのが嫌になると、今度は密かに雇ったエンジニアと一緒に機関車の模型を作って遊び始め、やがてその取り組みがディズニーランドに繋がるというカオスっぷりです。

創造の狂気 ウォルト・ディズニー

創造の狂気 ウォルト・ディズニー

白雪姫 (字幕版)

白雪姫 (字幕版)

3つ目は『ピクサー 早すぎた天才たちの大逆転劇』です。 最初は妄想としか思われていなかった「3DのCGで長編アニメーション映画を作る」という夢を掲げて、1960年代の基礎研究から1990年代の『トイ・ストーリー』までの約30年間、大勢の人たちが人生を賭けて意地を貫いてきた様子が描かれています。

ちなみに、長編第1作目が「おもちゃ」をテーマにしたのは、細やかな毛髪を持つ人間と違って、玩具は3DCGで表現しやすいというテクノロジー制約によるものです。 そのリベンジが『モンスターズ・インク』のサリーという毛むくじゃらの怪物だったりします。 こういったクリエイター観点での試行錯誤を知った上で視聴するとまた違った面白さがあります。

ピクサー 早すぎた天才たちの大逆転劇 (ハヤカワ文庫NF)

ピクサー 早すぎた天才たちの大逆転劇 (ハヤカワ文庫NF)

3-3. テーマのある旅

ぶらりとテーマのある旅をしたら色々と感動したのでオススメですよという自慢。

  • 関東近郊の古墳を巡ったり → 『まりこふんの古墳ブック』
  • 熊野古道で山越えをして日本最古の温泉に浸かったり → 『熊野古道 巡礼の旅』
  • しまなみ海道で往復100km以上をレンタルサイクルで踏破したり → 『しまなみ島走BOOK』

いずれは桜前線に沿って日本北上の旅とかしたいですけどね。 1花月感もとい1ヶ月間、毎日どこを歩いても満開の桜に囲まれているなんて素敵じゃないですか。

まりこふんの古墳ブック

まりこふんの古墳ブック

熊野古道 巡礼の旅 よみがえりの聖地へ!

熊野古道 巡礼の旅 よみがえりの聖地へ!

しまなみ島走BOOK <改訂版?> しまなみ海道の達人がおすすめするサイクリングの解体新書![しまなみ海道] [ガイドブック]

しまなみ島走BOOK <改訂版?> しまなみ海道の達人がおすすめするサイクリングの解体新書![しまなみ海道] [ガイドブック]

他にも外に出掛けるという意味だと、2017年はミュシャ展、ブリューゲル展、ディズニー・アート展に行きました。 特に私は、その時代の技術・技法を活用して、その時代の科学で検討して、だけどテーマは過去への憧憬だという作品が好きです。 心象風景をいかに美術作品に射影しているかという観点で楽しみます。 テクノロジーとサイエンスとヒストリーとアートが混ざり合っている感が堪りません。

とはいえ所詮は素人ですので、あれこれ妄想するために知識を補充します。 例えばブリューゲル展では『芸術新潮 2017年 05月号』を読みました。

  • ブリューゲルの「バベルの塔」はロッテルダム版とウィーン版の2作品があり、これらの共通点・相違点を比較分析することで、何を描きたかったのか、どう描きたかったのか、どんな工夫をしたのか、考えがどう変わったのかを推察しようという内容です。
  • 大友克洋氏が「バベルの塔」の内部を、芸大がレプリカ(拡大図)や模型で外側を、それぞれ再現しようというプロジェクトが実施され、その過程での学びも紹介されています。例えば、物理的構造としては塔は正丸に近くなるはずなのに、どっしりとした雰囲気を描写するためにブリューゲルはあえて楕円に描いているのではないか、といった内容です。

芸術新潮 2017年 05 月号

芸術新潮 2017年 05 月号

4. 精神

4-1. レジリエンス(対ストレス性)

レジリエンスについては『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』が参考になります。

というのも、ストレスとは「自分の大切なものを奪おうとする脅威」に対して生じるものだからです。 例えば「言われた仕事をやらされるのが嫌だ」というストレスの背景には「自尊心を傷付けられるから」という理由があるのです。 ストレスと向き合うことで「自分が大切にしたいものは何か」を実感し、生きがいや価値観を再考できます。

ちなみに、ストレスに対しては

  • 闘争・逃走反応:思い切って逃げる
  • チャレンジ反応:緊張感とやりがいを感じて立ち向かう
  • 思いやり・絆反応:コミュニケーションを通して痛みを緩和する、人助けを通して小さな成功体験を積む

のいずれかの方法で対応することになります。 ストレスの多寡や耐性力によっては咀嚼する時間が必要なので、無理にコントロールするものでもないとは思います。

スタンフォードのストレスを力に変える教科書

スタンフォードのストレスを力に変える教科書

4-2. どう死にたいか

『死ぬ瞬間』という本では、200人の末期患者に対するインタビュー記録を紹介しています。 中には、インタビューを取り付けた翌日に亡くなった方もいます。

亡くなる本人、残される家族、医療従事者が実際に話した言葉が載っています。 死に至る過程で1人1人が何を考えているのか、心の動き(死の五段階説)を追体験することになります。

  1. 否認:自分は本当は健康なはずだと思い込む、暴食、激しい運動、治療拒否
  2. 怒り:まだ余生のある他者への妬み、なぜあいつではなく自分なのかという理不尽さ、コントロールできない現実への敗北感
  3. 取引:せめて最後にこれをするまでは待ってくれという懇願、誰かの役に立って自分の存在意義を証明しようとする焦燥感
  4. 抑鬱:手術や薬品で美しかったはずの体や自分らしさを損なったことによる喪失感、これから大切なものを失う絶望感
  5. 受容:少数の愛する人たちと何を話すでもなくただ側にいて一緒に最後の時を過ごしたいという願い

死を宣告された後になって初めて意識する「1番の気掛かり」は、本当は健康だった頃からずっと胸の奥に抱えていることだったりします。 死の追体験をすることで、どう死にたいか、死ぬ瞬間までに自分はどうなっていたいか、残された時間をどう生きるか、ということに向き合うことになります。

死ぬ瞬間―死とその過程について (中公文庫)

死ぬ瞬間―死とその過程について (中公文庫)

4-3. どう生きたいか

生き方をデザインする方法は色々ありそうですが、1つは過去の人間の生き方を叩き台にして「こうなりたいな」とか「こうはなりたくないな」といった自分の価値観を探ることではないでしょうか。

  • 『古代への情熱』:初恋の相手との約束を果たすために生涯を費やしてギリシャの遺跡を発掘したシュリーマンの自伝。
  • エジソン・ストーリー』:発明家・起業家として「電気」を軸に人々の生活様式を作り変えていったエジソンの話。
  • 『わが友マキアヴェッリ』:マキャベリさんがチェーザレ・ボルジアに影響を受けたり、フィレンツェの未来を憂いたりする話。
  • 『入門経済思想史 - 世俗の思想家たち』:アダム・スミスカール・マルクスら経済学者が、その時代ごとの社会課題や危機意識と向き合い、人類がより豊かになるための経済モデル(ビジョン)を模索した姿が描かれています。
  • 統計学を拓いた異才たち』:フィッシャーやコルモゴロフら統計学者が、データと確率論を駆使して農業・医薬品・経営・著者推定・遺跡発掘と様々な分野で隠された真実を暴く姿が描かれています。
  • 『数学をつくった人びと』:ラグランジュガロアら数学者が、身分やら宗教やら仕事やら恋愛やらに翻弄されながら数学を発展させていく様子が描かれています。

手元の読書メモを読み返して出てきた書籍たちです。

古代への情熱―シュリーマン自伝 (新潮文庫)

古代への情熱―シュリーマン自伝 (新潮文庫)

エジソン・ストーリー The Thomas Edison Story (ラダーシリーズ Level 1)

エジソン・ストーリー The Thomas Edison Story (ラダーシリーズ Level 1)

  • 作者: ジェイク・ロナルドソン
  • 出版社/メーカー: IBCパブリッシング
  • 発売日: 2011/09/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログを見る

わが友マキアヴェッリ―フィレンツェ存亡〈1〉 (新潮文庫)

わが友マキアヴェッリ―フィレンツェ存亡〈1〉 (新潮文庫)

入門経済思想史 世俗の思想家たち (ちくま学芸文庫)

入門経済思想史 世俗の思想家たち (ちくま学芸文庫)

統計学を拓いた異才たち(日経ビジネス人文庫)

統計学を拓いた異才たち(日経ビジネス人文庫)

数学をつくった人びと〈1〉 (ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ)

数学をつくった人びと〈1〉 (ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ)

偉人のエピソードというのは概して面白いもので、後付けにせよ盛っているにせよ捏造されているにせよ、何かを成し遂げるための意思と行動が描かれているわけです。 「どう生きるか」というのは、どのような意思で、どのような行動を選び、何を成し遂げるのか、ということなのかなと。

ちなみに何かを成し遂げるというのは、偉人としてエピソードを残すことに限らないのかなとも思うわけです。

あなたには特別な力があるんだから。たとえばさ、妻を幸せにする、とかそういう力よ

『モダン・タイムス』(伊坂幸太郎

モダンタイムス(上) (講談社文庫)

モダンタイムス(上) (講談社文庫)

まとめ

ということで、メンタルのエネルギーを管理するための原理原則と、4つの観点を補うための事例紹介でした。 ノリノリで書いたら10,000字を超えてしまった。すまん。

「どうも調子が悪いな」という違和感を突き詰めて、今の自分に足りないものを補うことで、道は開けるのではないでしょうか。 雨が降ったら傘をさすように、エネルギーが欠けているのなら、埋め合わせていきましょう。 自己啓発感が溢れる感じ(というか自分語り)になっていますが、セルフマネジメントは大事ですよねという話でした。

オチ

ちなみにビブリオバトルの投票結果は圧倒的大差でボロ負けでした。無念。