下町柚子黄昏記 by @yuzutas0

したまち発・ゆずたそ作・試行錯誤の瓦礫の記録

データ分析は命を救うこともあれば、命を奪うこともある

この記事は、風音屋(@Kazaneya_PR)が提供する研修「K-DEC」卒業生に向けたメッセージの一部を、そのまま社外に公開したものとなります。

データ分析が重要な仕事であるということを理解してほしいです。データ分析は意思決定に影響を与えます。データ分析はビジネスやプロジェクトの根幹を支えます。データ分析は命を救うこともあれば、命を奪うこともあります。私たちが良い仕事をすれば誰かの人生を豊かにできますし、私たちが手を抜けば誰かの人生に迷惑がかかります。

戦争とデータ分析

データ分析が命を救った事例を紹介します。統計学者ナイチンゲールは、クリミア戦争で野戦病院に行き、死因のデータを記録しました。怪我で亡くなった方よりも、感染症で亡くなった方のほうが多いことを特定しました。なぜ感染症になるのでしょうか。病院の衛生状態が劣悪だったからです。つまり被害を減らすには、兵士を鍛えて怪我を防ぐことではなく、病院の衛生状態を清潔に保つことを優先しなければいけないのです。ナイチンゲールはデータ分析の結果を報告することで多くの人の命を救いました。次の図はナイチンゲールが論文で使った円グラフです。赤・黒が怪我で亡くなった方、青が感染症でなくなった方です。

https://hmn.wiki/ja/Pie_chart

データ分析が命を奪った事例については割愛します。戦争をはじめとして、サイバー攻撃や犯罪組織などでも、データを活用した様々な施策が展開されているようです。戦争の例を挙げましたが、私たちの仕事についても同じです。

企業におけるデータ分析

私たちの仕事は「クライアントの商品を使う顧客」「クライアント企業に勤めている社員」「その家族」など、100人以上の人たちの人生に影響を与えます。私たちが自分の仕事に妥協をして、数字が間違っていたり、システムが止まってしまったり、レポートや資料が分かりにくくて勘違いをさせてしまったら、クライアントは誤った判断をしてしまいます。

顕著な例が「赤字のカフェ」です。個人経営の飲食店はすぐに潰れると言われています。よくある例としては、集客が課題なのに、商品開発に力を入れてしまうわけです。すぐに新メニューを作ろうとしてしまう。当然ながら新メニューを作っても集客は改善されず、カフェは潰れてしまうでしょう。このような意思決定が企業の命運を分けることだってあるのです。

同じようなことはあらゆる場所で起きています。あるビジネスのユーザーが減ったとして「新規顧客が減っているのか」「既存顧客が来なくなっているのか」で打ち手は変わります。離反が増えているのに、製品やサポートを改善せずに、キャンペーンばかりやっても、ビジネスを立て直すことはできないでしょう。1つ1つの課題に対してデータを見ることで、よりインパクトのある意思決定が可能になります。

私たちはデータを通してビジネスを改善し、クライアントの商品を使う顧客の生活を豊かにし、クライアント企業を成功させ、クライアント企業に勤めている社員やその家族の生活を豊かにします。私たちは100人以上の人たちの人生を背負っているのです。だからこそ高いお金を払ってもらっているのです。「こんな雑な仕事に人生を預けられない」と思われないように、プロとしてベストを尽くし、「人生を預けるだけの価値がある」と誰もが認めるようなアウトプットを出していきましょう。

赤字のカフェとデータ分析

ということを伝えたくて、K-DECでは潰れそうなカフェのデータを扱ってもらいました。ツールの使い方だとか、設計や分析の手法だとか、資料の丁寧さだとか、そういうのももちろん大事ですが、それ以上に「データを通してビジネスを改善する」ということの重要性を理解してほしいと考えています。あなたはどうでしたか。K-DECを通して、潰れそうなカフェを救うことはできましたか。

カフェのモニタリング整備を依頼したのが、あなたの親友だったとしましょう。その親友の両親(または祖父母)が退職金で始めたカフェだったとしましょう。あなたがベストを尽くせば、そのカフェは救える可能性があります。カフェの経営が軌道に乗って、家族皆が幸せに暮らせる未来です。あなたは恩人として親友の家族一同から感謝されて、たまにお店を訪れては、きっと最高の一杯を楽しめたことでしょう。

想像してください。あなたのK-DECのアウトプットについて、親友やその家族は喜んでくれているでしょうか。あなたはアウトプットに対して妥協していなかったでしょうか。あなたのアウトプットは、他人の人生を本当に背負うことができるでしょうか。他人に人生を賭けてもらう価値のあるアウトプットになっているでしょうか。

もしミスがあったのだとしたら、そのミスのせいでカフェが経営破綻して、家族は不幸に見舞われてしまうかもしれません。そういう覚悟のもとで、ミスがないように徹底的に自分でチェックしたでしょうか。

ただでさえ経営難のカフェですから、無駄遣いをする余裕はありません。限られた予算を最大限に活かせるようにコスト面で工夫したでしょうか。カフェの資金が日々減っていく中で、1秒でも早くアウトプットを出せるように全力を尽くしたでしょうか。言われたことだけではなく、家族を救うため、自分なりに頭をフル回転させて、本当に必要なプラスアルファの取り組みまで踏み込めたでしょうか。

1つでもミスを減らすこと(Quolity)、1円でも節約すること(Cost)、1秒でも早く進めること(Delivery)、1つでも要件を広げること(Scope)について、QCDSを最大化できるように、あなたはベストを尽くしたでしょうか。

YESなら素晴らしいです。今後もプロフェッショナルとしてぜひ活躍してください。クライアントとチームメイトが、そしてその先にいる沢山の人たちが、あなたの活躍を待っています。

NOなら改めて自分のスタンスを問い直してほしいです。あなたは少なくとも1つの家族の幸せを壊したことになります。

言い訳に逃げないこと

「研修であって本番ではない」と言いたくなるかもしれません。その通りです。ですが、研修で出来なかったのであれば、プロフェッショナルとしてのスタンスが身についていないということですので、今のままだとリアルな仕事でも同じことをしでかすでしょう。

「事前に言っておいてくれ」「要件には書いていなかった」と言いたくなるかもしれません。その通りです。ですが「言われなければベストを尽くせない」「言われなければ仕事の意味を想像できない」「指示されなければ作業ができない」のであれば、それはプロフェッショナルとしてのスタンスが身についていないということです。「データから経営状況を読み取れない」のであれば、あなたは言われた集計や実装をしているだけで、データとは向き合えていないということです。あなたと一緒に仕事をする人や、あなたに仕事をお願いする人は、あなたをマネジメントするためにコスト(時間、労力、意識)を割かなければいけなくなります。あなたをデータの専門家と呼んだり、あなたに対して高いお金を払って仕事を相談したいとは思わないでしょう。

「もともと赤字なら自分の責任ではない」と言いたくなるかもしれません。その通りです。ですが、あなたはデータの専門家として相談を受けたはずです。あなたにはカフェを救えるチャンスがありました。カフェを救える人がいるとしたら、それはあなたでした。そのチャンスを活かせないのだとしたら、あなたをデータの専門家と呼んだり、あなたに対して高いお金を払って仕事を相談する意味はありません。

「まだ駆け出しだから仕方ない」「スキルが足りていないから仕方ない」と言いたくなるかもしれません。その通りです。ですが、お金をもらって仕事をしていくのであれば、あなたが1年目だろうと、あなたが20年目だろうと、お金を払う側にとっては関係ありません。あなたは1人のプロフェッショナルです。新米のバリスタだったらコーヒーを淹れられなくても許されるのでしょうか。新米の医師だったら手術に失敗しても許されるのでしょうか。新米の警察官だったら市民に誤発砲しても許されるのでしょうか。経歴が浅いことやスキルが足りないことを理由にして、パフォーマンスが低い状態に甘んじないでください。言い訳をするヒマはないはずです。1秒でも早く駆け出しを卒業できるようにベストを尽くしてください。

「言い方が過剰だ」「表現が極端だ」と言いたくなるかもしれません。その通りです。ですが、過剰ではあっても、間違いではありません。私たちの仕事には、大きな責任と、大きな意義があります。責任と意義があるからクライアントはお金を払うのです。責任と意義があるから私たちは人生の一部の時間を投下して働くのです。あなたがきちんとプロとして仕事をしていれば説教をされることはありません。他人が文句を言う余地がないくらい、QCDSの最大化を徹底してください。低い水準の仕事をしないでください。最高のパフォーマンスを出してください。

社会の一員として期待されていること

カフェ店員のように美味しいコーヒーを淹れるわけでもなく、医者のように数年かけて難関資格を取得した上で医療行為を行うわけでもなく、警察のように市民の安全を守るために命を賭けるわけでもなく、冷暖房の効いた部屋で、フレックスタイムで、ラフな格好をして、お菓子や飲み物を頬張りながら、データをガチャガチャといじるだけで、毎月何十万円もお金を振り込んでもらおうとしている。はっきり言って異常です。これを当たり前だと思わないでください。それでも、私たちの仕事に対して誰かがお金を払ってくれるのだとしたら、それは、私たちの仕事が沢山の人たちの人生を豊かにできると期待していただいているからです。

カフェの経営を立て直して家族を笑顔にするように、クライアントのビジネスを改善して、その先にいる沢山の人たちの人生を豊かにしていきましょう。

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