下町柚子黄昏記 by @yuzutas0

したまち発・ゆずたそ作・試行錯誤の瓦礫の記録

新入社員を現場で受け入れるプラクティス

私のところでは新入社員の受け入れ時期になりました。 思考の整理を兼ねて、過去に現場リーダーとしてやったことをまとめます。

スコープ

本稿では「新卒社員」かつ「現場での受け入れ」をスコープとします。

  • 新規参画者向けのTODOやフォロー体制は別途存在する。中途入社や異動があるので共通。
  • 会社横断でのTODOやフォロー体制は別途存在する。新人研修など。

なお「こいつは新入社員として扱かったらダメだろ」みたいな即戦力人材は対象外。

関係者の期待を確認する

関係者に期待事項をヒアリングするところから始めます。

  • 本人(変わりうるので都度確認する)
  • メンター
  • 研修時の上長・講師
  • 配属後の上長

配属意図、関心事項、伸ばしたいポイントについての認識を揃えます。 本来はメンターや上長が推進すべきですが、手が回っていないことが多いので、現場で巻き取るスタンスで。

関係者ごとに意見が異なる場合は、なるべく本人の意思を尊重します。

  • 人は「自分のやりたいことしかやらない」「自分の聞きたいことしか聞かない」ものだと割り切る。
  • 人は誰かが育てるものではなく、自ら育つものである点に注意する。
  • どんな相手であれ、ある側面では自分以上の介在価値を発揮する人材であることを念頭に置いて接する。

コテコテの新人育成メニューを押し付けるようなことは絶対にしないと決めています。 機を見て「こういう点を伸ばすと良いかもね」メッセージを織り込むくらいに留めます。

依頼する業務について

本人と話して案件を選んでもらいます。

制約条件は色々あるので配慮が必要となります。

  • 本人のケイパビリティに合致するもの
  • 推定工期が長すぎないもの
  • 緊急度は低いが重要度は高いもの
    • 緊急の仕事を押し付けるな
    • 重要でない仕事を押し付けるな → 「なぜ重要なのか」の背景を踏まえて依頼する
  • トラブルが起きること前提で、フォローできる範囲内に留める

主な方針は以下のどちらかになるはず。

  • 簡単な作業から徐々にステップアップするチュートリアルモード(人材育成の書籍や社内制度はこちらを前提としたものが多い)
  • 最初から高い目標を叩きつけるハードモード(急成長・表彰狙い)

最終的には同じところに着地するので、まぁどっちでもいいかと。

  • チュートリアルモードでもそのうち全工程を自ら推進してもらうようになる。
  • ハードモードでもやることは同じ:目的・制約の整理→作業分解→TODOリストを捌く→頻繁に軌道修正。

配属直後の登り方やコミュニケーションの取り方が若干変わるくらいですかね。 私はチュートリアルを突っぱねた派なので、同じような性格の人だと辛かろうということで方針を聞くようにしています。

「自走スキル」を身につけてもらう

一連のPDSサイクルを主体的に回すように促します。

  1. 自ら問題を見つける
  2. 自ら解決策を考える
  3. 自ら解決策を実行する
  4. 自ら実行結果をもとに振り返って次の手を打つ

自走さえできれば他のスキルは後から身につくので、この1つだけに絞ります。

スキル習得のために、ひたすら「あなたはどう思いますか?」を問い掛け続けます。

  • その上で、少しでも兆しが見えたら褒める。とにかく褒めまくる。メッセージング目的なので露骨で良い。
  • 内容の成否ではなく姿勢を評価する。成否はアンコントローラブルな部分があれど、姿勢は再現可能なので。
  • 褒めるときは、本人の前だけでなく、本人がいないところ、いろんな人が見ているところで褒める。

基本的にはミスを責めずに、サポートする方向で。

  • STEP1やSTEP2の筋が悪いのは経験や知識が足りないだけ。
  • 着手できないのはSTEP3のリードタイムが長いだけ。
  • アクションが失敗するのはSTEP4の一部。

というか自分自身も毎回スムーズにできるわけじゃないだろと自省しながら対峙する感じです。 逆に毎回スムーズなら、挑戦していないということなので、新入社員以下だという自覚を。

本人とのコミュニケーション

毎日30分の1on1を設ける → 少しずつ頻度を減らす。

  • 最初は個人タスクについて「やったこと」「よかったこと」「困っていること」を聞く。本人の抱える課題を検知する。
  • 徐々に、1on1で話した内容をチーム内にフィードバックするように促す。本人の困りごとは、本人がチーム内で相談して、チームでフォローしてもらう状態に持っていく。
  • チーム単位での動きに慣れてきたら「チームの状況」「何が1番の問題だと思うか」「どうしたらいいと思うか」を聞く。チーム内で介在価値を発揮してもらう。

注意点として「こういうところは良くなかった」の指摘は、他の人がいないところでやります。

  • 最初の方に1回だけ仕事のスタンス面について話すことがあるかないか。通過儀礼なので2度は言わないですが。
  • 去年の実例:影響範囲を考慮せず何となくのプルリク出す → 「これがそのままリリースされて顧客に届いたらどうなると思う?」
  • 軽微なミスはいちいち怒らない。ポカ避けをどう組み込むかが大事。上記の例も本来はシステムで防ぐのが望ましい。

基本方針は他メンバーとのコミュニケーションと同じで、気持ち丁寧に対応します。

関係者とのコミュニケーション

配属チームの他メンバーとも頻繁に会話します。

  • しつこいくらい何度でもフォローを依頼します。「大丈夫そうだった?」「困っていなかった?」を聞きまくる。
  • チームメンバーに対して「実は本人はこう思っているらしいよ」のフィードバックを繰り返す。特に若手メンバーは「全然気づかなかった」と返してくることが多い。
  • 新入社員を気にかけてもらうことでチームとしてフォローしやすくなる。リーダーや後輩指導の経験が少ない若手メンバー自身の成長にもつながる。逆にリーダーと新人の1対1の関係に終始すると、チームの成長機会を損ねてしまうので注意。

新入社員と仲が良いチーム外の先輩に、本人の相談相手になってもらいます。

  • チーム内のメンバーやリーダーでは引き出せない本音もあるだろうということで。同様に、男性ばかりのチームに女性が配属されたら、女性社員に声を掛けてもらう、といった観点もありますね。相性などもあるので色々配慮します。
  • 「相談相手で〜す」というより、それとなく話を聞く存在になってもらいます。内容をフィードバックするかどうかは相手の判断に任せます。私の言動を変える必要がある場合は、本人の代弁者として叱ってもらいます。
  • わざわざ依頼しなくても相談相手になっていることもあるし、余計なお世話だろ感があるが、念には念を。本人にとっては人生で初の仕事なので、最初のほうは多少お節介すぎるくらいでよかろうという思想。これが続くとうざい(というかキモい)ので、ある程度自走できるようになったら基本はノータッチ。

上長との1on1で報連相しておく。

  • 新人の担当業務と状況、私の新人に対するコミュニケーション内容について話します。
  • 進め方やコミュニケーションの取り方についての相談に乗ってもらいます。問題があれば指摘をいただきます。
  • 上長経由でコミュニケーションしたほうがいい場合などは依頼する。特に、偉い人が新入社員の仕事ぶりを直接見れない距離であれば「がんばっているらしいじゃん!いつも話を聞いているよ!」と一声掛けるだけで、心理的安全性が担保されることもあります。

連携が多い部署には挨拶しておく。

  • 受けられるサポートが多いに越したことはないので。
  • その業務で少しでも成果を出したら「配属1ヶ月でこんな成果を出せました!」的な感じで一緒に祝う → 「部署は違うけど手伝ってよかった」のポジティブサイクルに巻き込みます。

なお、リーダー(私)の観点から見て、最も大切なことは「私自身の言動が糞だったときに、新入社員が他のひとに相談して、私をぶっ刺せるルートを確保すること」だと思っています。

  • これがないと間違っていたときにフィードバックを受け取れない=改善できない。
  • 逆にこれさえ確保できていれば、多少のミスはどうにかなる。
  • 人と人の話なので正解はない → ノーミスは無理 → ミスを誰かがカバーする方向で備える。

まとめ

色々書いたけど、基本的には「なるべく自分事として受け止める」「1人で背負いこまない」というのを、丁寧に徹底しましょう、というだけの話です。 1人1人やり方は違うので正解はないかもしれませんが、最初のほうでコミュニケーションに手を抜くと、後々面倒になるのかなとは思います。

おわりに

あとあれですね、年度末の新入社員プレゼンで「このリーダーのもとで働けてよかった」的なことを言ってもらえると、結構嬉しかったりしますね。

部下育成の教科書

部下育成の教科書