下町柚子黄昏記 by @yuzutas0

したまち発・ゆずたそ作・試行錯誤の瓦礫の記録

開発運用チームを立て直した話

SPI Japan 2017というカンファレンスで発表をしました。 グロースフェーズの痛みの中で、いかに開発・運用チームを立て直したかという内容になります。

発表スライド

「Rebuild Team - 急成長プロダクトのDev&Opsで生じる悪循環とその解決策」

ここ最近の発表の集大成です。 急成長フェーズを体験した人は多くないはずなので、有用な知見ではないかと自負しています。

参加した感想

  • 運営が非常に丁寧でした。選考通過時にはレビュアーから「こういう点が素晴らしい」とコメントいただき、また当日には司会者からフォローをいただき、非常に話しやすい場作りがなされていました。
  • 一方で内容面については全体的に違和感を覚えました。もやもやです。
内容 思ったこと 補足事項
「改善施策が現場に受け入れられない」という意見が多かった 改善施策は現場の人が現場のために生み出すものではないか。
現場にメリットのない改善施策に意味はあるのか。
最後のパネルディスカッションで似たようなツッコミが出たので安心しました
1人1人の改善意識をいかに養うか → 打ち手として「教育」「評価」の話になりがち 普段からお互いに「お前はどう思う」を聞きあうだけで解決するのでは
参考:新入社員の自発的な課題発見・解決を促す
パネルディスカッションで似た話が1
「今回の取り組みをもとにXXX導入を社内全体に広げていきます」といった今後の方針 わざわざ広げる必要ないのではと思う内容が多々。
プラクティスには適用範囲があるので。1
文脈は違えどクロージングセッションのSoE/SoRの話が近いのかなと
テストコードやアジャイル手法を「やってみた」が多い WEBに山ほど上がっている各社事例で知見としては十分ではないか。
適用するプラクティスと生じる問題に業界の差は見受けられなかったので。1
単純に私の観測範囲がほかの参加者とズレていたのだと思いますが

個々の取り組みはどれも素晴らしいものだと思います。1つ1つの活動を否定する意図はありません。

ただ、趣旨が趣旨なので仕方ないのかもしれませんが、「改善」自体が目的化しているように感じる場面が多かったです。 どちらかというと「これから改善活動を担う人」向けのイベントだったということでしょうか。

「改善」から卒業しようと決めた

「プロセス改善」や「xx手法」といったものは、名前こそ大仰ですが、実際には高校生でもやっていることです。

  • どうやったら好きな人に喜んでもらえるか、ひとづてにリサーチしてみたり
  • どうやったらケンカした友達とまた一緒に遊べるようになるか悩んでみたり
  • どうやったら試合に勝てるか、スポーツの練習メニューを試行錯誤してみたり
  • どうやったら楽に良い点数が取れるか、効率の良いテスト勉強法を模索してみたり

そのなかで定石(問題と打ち手の組み合わせ)がパターン化されて名前が付けられるわけです。 「部署間のハレーション」と「子供同士のケンカ」の解消方法は、よく似ていると思いませんか。

結局は、目の前の出来事といかに向き合うか、が重要なのだと考えています。 付き合い始めのカップルのほうが、そこらの開発チームよりも高速にPDSサイクルを回しているとは思いませんか。

夜も眠れなくなるくらいの問題意識があれば、諦めたくない目標があれば、本気で熱中できるものがあれば、 「What」への強い関心があれば、必然的にその過程で「How」は磨かれていくでしょう。

今回に限らず、Howや改善に関するイベント・議論に対しては、以前から違和感を覚えていました。 「また同じ話か」と分類できるくらいには、私自身の見識が十分に育ったのだと解釈しています。1

ということで、なるべく「改善」という言葉は使わないようにします。 "こうやって工夫しました"(How)ではなく、"こういうことをやりました"(What)。 「おもしろいでしょ」と世の中に自慢するような、そんな動き方を大切にしたいなぁと思いました。

海からの贈物 (新潮文庫)

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  1. 作業のリードタイムが短く、試行錯誤のサイクルを回しやすいソフトウェア担当者のほうが、ハードウェア担当者と比較したときに、現場発の改善活動に取り組みやすいように感じる、という某社の方の意見。つまるところ「いかに普段からPDSサイクルを回しているか」「いかに普段から自分の考えを言葉・行動に出せているか」「そういった空気を醸成できているか」だと解釈しています。

  2. この手の拡大議論は、既に1度なされているという認識でした。XPに端を発した2000年代のアジャイルブームの時の講演資料を漁ると、共通ルール化や組織内普及の事例が出てくるので。

  3. 何か新しい視点が得られたら良かったのですが。社内でtwadaさんやi2keyさんの取り組み・知見が展開されることもあり「うーん」というのが正直な感想。

  4. ここでは極めて個人的・主観的な物の見方をしています。