この記事の趣旨
筆者(@yuzutas0)がプレゼンテーション資料作成をアシスタントに代行してもらうにあたって「こういう点に注意してほしい」という項目を列挙した。 自分のために書いた記事ではあるが、筆者と関わりがない方も、ぜひスライド作成の参考にしていただけると幸いだ。
もくじ
- この記事の趣旨
- もくじ
- 背景
- 免責・参考資料
- 必読書
- Tips 01: キーメッセージ
- Tips 02: コンセプト
- Tips 03: アウトライン
- Tips 04: PREP法
- Tips 05: 免責事項
- Tips 06: 自己紹介
- Tips 07: 1スライド・1メッセージ
- Tips 08: 余白とグルーピング
- Tips 09: 余計な要素を削ぎ落とす
- Tips 09: 箇条書きではなく図や表にする
- Tips 10: x軸とy軸の慣習に従う
- Tips 10: カラーの慣習に従う
- Tips 11: カラーは6色まで
- Tips 12: フォント
- Tips 13: 囲い線を減らす
- Tips 14: いらすと屋を使わない
- Tips 15: Special Thanks を掲載する
- Tips 16: 読み返す→音読する→人に聞いてもらう
- Tips 17: 幹から枝葉へ
- 最後に
背景
筆者はアウトプットを行う機会が多い。 2021年は以下のようなアウトプットを行った。
- 技術評論社から書籍『実践的データ基盤への処方箋』を出版。
- 雑誌「Forbes Japan 2021年11月号」に取材記事が掲載。
- 翔泳社のWEBメディア「CodeZine」に取材記事が掲載。
- 翔泳社のWEBメディア「ProductZine」に連載記事が掲載。
- FLINTERS(元セプテーニ・オリジナル)他主催のカンファレンス「Tech x Marketing 2021」で基調講演。
- Google主催のカンファレンス「Google Cloud Day: Digital' 21」で登壇。
- 翔泳社主催のカンファレンス「Developers Summit 2021」で2本の登壇。
- Forkwell主催のイベント「Engineer Career Lounge」でパネラー登壇。
- primeNumber他主催のイベント「Data Engineering Study」でモデレーターを担当。
メインの業務は別にあるので、執筆や登壇はボランティアのようなものだ。 IT業界では先輩方が知見を公開してくださっている。 私はその知見に触れてスキルアップしてきた。 だから自分も後輩に知見を提供する義務があると感じている。
そうは言っても本業ではない。 できることなら執筆や登壇に当てる時間はゼロになることが望ましい。 1時間のプレゼンテーションで拘束されるのは仕方ないが、資料作成に自分の工数を割くのは経済合理的とは言えない。
そこで2021年は「他の人に資料を作ってもらう」という実験を行った。 例えば、Googleが主催するイベント「Google Cloud Day: Digital' 21」では、他の人に資料を作っていただいた。 外資系企業出身の優秀な方で、事前にスライドの骨子を用意してくださった。 私は企画ミーティングで最低限のコメントを行い、あとはGoogle Slidesのコメント欄でレビュー&ブラッシュアップを指示しただけだ。
一方で「テイストが自分らしくない」と感じてしまったのも事実だ。 細かい点にこだわるメリットはないので、担当者に任せるべきだとは思っている。 自分の器を広げるべきなのだろう。 ただ、自分の好みのテイストで資料作成をお願いできるなら、それに越したことはない。
そこで、この記事では「こういう風にスライド資料を作ったら良いのではないか」という、私なりのデザインTips集をまとめていきたい。 必要に応じて公開後にも追記・編集を行う。 ブックマークしておいて、ご自身のスライド作成時に読み返してもらえると嬉しい。
免責・参考資料
本稿で取り上げるスライド例は全て私自身が作成に関わったものだが、念のため参考資料リストとしてURLを掲載しておく。
- https://speakerdeck.com/yuzutas0/20211210
- https://speakerdeck.com/yuzutas0/20211022
- https://speakerdeck.com/yuzutas0/20210526
- https://speakerdeck.com/yuzutas0/20210218c1
- https://speakerdeck.com/yuzutas0/20210218c9
- https://speakerdeck.com/yuzutas0/20200528
- https://speakerdeck.com/yuzutas0/20200715
- https://speakerdeck.com/yuzutas0/20190719
- https://speakerdeck.com/yuzutas0/20170909
必読書
具体的な話に入る前に「ぜひ読んでおいてほしい」という本を4冊紹介する。 まだ読んだことがないのであれば、今すぐ読んでほしい。
Tips 01: キーメッセージ
以下を最初に抑える。
- このプレゼンテーションを聞く人は誰か?
- このプレゼンテーションを聞く人は何に困っているか?
- このプレゼンテーションを聞いた次の日に、どのような行動を取ってほしいか?
私のスライドでは冒頭で必ず上記に答えている。 最後に「明日からこれをやってね」とメッセージを伝えて終わっている。
視点 | 例 |
---|---|
対象 | |
課題 | |
ゴール | |
NextAction |
Tips 02: コンセプト
コンセプトとなる図を1つ用意する。 この図でプレゼンテーションの全体像を表現する。
例えば、上記の資料は「ビジネスのフェーズによって適切なテクノロジー戦略は変わる」ことを表現している。 この図を描けたら後は簡単だ。 それぞれのフェーズについて「このフェーズではこういうテクノロジーを使う」「なぜなら○○だから」「こういう点で工夫が必要だ」「こういう点がデメリット・リスクだ」と列挙していけば良い。 聞き手にはご自身のフェーズを当てはめながら改善余地について考えてもらえば良い。
同じように、上記の資料は「デジタルトランスフォーメーション(DX)を進めると何が障壁になるか」を表現している。 こちらも時間軸ごとに生じる出来事を表現している。 この図を示すことができたら、あとは各課題について「どのような課題なのか?」「なぜこの課題が生じるのか?」「どのように解決するのか?」を紹介していけば良い。
Tips 03: アウトライン
主に「時系列」「問題解決」「講義」の3パターンがある。
「時系列」パターンでは出来事が起きた順番に説明する。 臨場感があるので、聞き手の共感を得やすい。 特定の事例を紹介するときに有効だ。
「問題解決」パターンでは「理想→現状→課題→課題の背景→解決策の検討→解決策の実施→結果→今後の展開」を説明する。 構造化されているので分かりやすい。
理想を言うと、日々の業務もこのフレームワークにもとづくことが望ましい。 普段からこのフレームワークで仕事を進めていれば「時系列」パターンと「問題解決」パターンに差異はなくなる。
「講義」パターンでは、あるトピックに対して「Why」(なぜ重要なのか)「What」(何が重要なのか)「How」(どのように実現するのか)を説明する。 基調講演や企業研修で役に立つ。
Tips 04: PREP法
「結論→理由→エピソード(具体例)→結論」の構成でスライドを作る。 お恥ずかしい話だが、自分自身はそこまで上手くできていない。 教科書的には正しいとされているし、上手くできている人の資料を読むと分かりやすいと感じる。 ぜひとも実現したい。
Tips 05: 免責事項
予期せぬトラブルを避けるために、私のスライドでは、冒頭に免責事項を掲載している。
残念ながら、免責事項を書いてもトラブルが起きるときは起きるし、見当外れのクソリプを寄せられる。しかし「この人間はきちんと免責事項を読んでいない」「こういう軽率な言動をする人間が相手なら民事紛争で著しく不利になることはないだろう」と思えるだけで、精神的には安心できる。
Tips 06: 自己紹介
情報多寡の時代なので「この人の話は聞く価値がありそうだ」と思ってもらう必要がある。 自画自賛を書いても説得力がないので、なるべく「第三者による評価」「事実だけ」を淡々と書くのが望ましい。
プレゼンテーションのテーマに沿った実績を最初に掲載する。 「WEBサービス開発」がテーマであれば、WEBサービス開発に関する実績を書く。 「データ分析」がテーマであれば、データ分析に関する実績を書く。 テーマにマッチすることを書くと、聞き手に対して説得力が生まれる。
Tips 07: 1スライド・1メッセージ
1枚のスライドを見たときに「要するに何が言いたいのか」が伝わるようにする。 さらに細かい話をしたければ、次のスライドで説明すれば良い。 メッセージをピラミッド構造に分解しよう。
上記はデータ分析部門でのテクノロジーの採用理由を紹介している。 最初に「アプリ」と「インフラ」で分けて、アプリの説明をした後に、インフラの説明を始めている。 インフラではBigQueryというツールの採用理由として3つの要素を上げている。
Tips 08: 余白とグルーピング
デザインの4原則「近接」「整列」「反復」「対比」に準拠することが望ましい。 そのために、最初は余白とグルーピングに注目するのが良いと思う。
スライドの各パーツは役割ごとにグルーピングされているだろうか。 グルーピングされた要素と要素の間には十分な余白があるだろうか。
上記のスライドは「エンジニア部門の半分をフリーランス人材が占めていること」を表現しようとして、最初に作ったスライドだ。 残念ながら何を伝えたいのかが分かりにくい。 このスライドを修正すると以下のようになる。
「結論」「フリーランス活用前」「フリーランス活用後」の3枚のスライドに分けた。 さらに、余白を設けることで「ラベル」と「組織図」を明確に分けている。 最初にラベルを表示しているので「青色の部分に注目すればOKだ」と読み取ることができる。 その後に組織図を見て「各部門の人員が強化されている」と読み取ることができる。 結果として「フリーランス人材の活用によってエンジニア部門が拡大したこと」を示せている。
Tips 09: 余計な要素を削ぎ落とす
そのスライドのメッセージに合致しない情報はカットする。 もしカットするのが不安であれば、スライドをコピーしておいて、オリジナルのスライドは「スキップ」にしておけば良い。 新たにコピーしたスライドを大胆に編集しよう。
例えば、上記のスライドでは「沢山のフリーランス人材が参画したこと」が重要だ。 一方で、以前から社内で働いている50名が正社員なのか常駐SESなのかは(少なくともこのスライドにおいては)重要な情報ではない。 そのため「社員/スタッフ 50名」という表記に統一して、両方とも緑色で図示するように変更した。
Tips 09: 箇条書きではなく図や表にする
テキストの羅列だけだと読みにくい。 何が言いたいのか一目で把握できるように、情報を構造化して図示しよう。
例えば、上記のスライドは言葉で説明しているので、これを図にすると、以下のようになる。
次の例も見てみよう。
上記のスライドでは3枚に渡って「システムを作り直す必要がある」「利用者の要求は増え続ける」「放置するとメンテナンスが困難になる」と述べている。これを1枚の図に表すと以下のようになる。
図にするコツは、ホワイトボードや紙に書き出してみることだ。
どうしても図にすることが難しければ、せめて表形式でまとめてみると良い。 メリハリのある見栄えになるし、項目の抜け漏れに気付きやすくなる。
上記を表にすると以下のようになる。
Tips 10: x軸とy軸の慣習に従う
図をスライドに書く場合、横(x軸)と縦(y軸)に何を置くかが重要になる。
例えば、時間の流れであれば「左が古い」「右が新しい」「左から右に流れる」という慣習がある。 テキストだけのスライドを「x軸=時間軸」に注意して手直ししてみよう。
上記を手直ししたのが以下だ。
モノや情報(データ)の流れも同じだ。 テキストで説明している内容を「x軸=データの流れ」として表現してみよう。
上記を手直ししたのが以下だ。 この例では「表形式にする」というテクニックも使っている。
Tips 10: カラーの慣習に従う
色を付ける場合、色の持つ意味を考慮しよう。 例えば、リスクを取るのは赤色で、安全なのは青色だ。 これは信号機で見かける色の組み合わせと言える。
Tips 11: カラーは6色まで
色は少なければ少ないほうが良い。 最初に「メインカラー」を決める。 メインカラーは、イベントやテーマに沿った色が望ましい。 「SRE」であれば青色(信頼性)だし、「DX」であれば緑色(デジタル)だ。
メインカラーとは別にメインカラーを薄めたカラーも使う。 上記のスライドでは濃い緑とは別に薄い緑を使っている。
次に「サブカラー」を決める。 サブカラーはメインカラーの補色がベストだ。 例えば、メインカラーが青色や緑色であれば、サブカラーは黄色が良いだろう。 サブカラーも濃い色と薄い色の2色を使ってOK。 サブカラーが黄色ならオレンジも併用しよう。
この4色に加えて「黒」や「白」を使う。 ちなみに「黒」を使う場合は「#000」ではなく、濃い目のグレーに寄せるほうが好みだ。 「#000」だと色として強調しすぎだと感じる。
Tips 12: フォント
私が主に使っているフォントは Tsukushi A Round Gothic の Bold だ。 フォーマルすぎず、カジュアルすぎず、良い塩梅だと思う。 Keynoteであれば上記で良いが、Google Slidesにおけるベストはまだ模索中。 もしオススメがあればぜひ伺いたい。
Tips 13: 囲い線を減らす
なるべく線で図を囲わないほうが望ましい。 線で囲うと強調されてしまうので、どの要素が重要なのか表現しにくくなる。
例えば、上記のスライドでは、矢印や吹き出しを線で囲っている。 なるべく線で囲わないようにすると以下のようになる。
もう1つの修正例も紹介しよう。
こちらは「余白・グルーピング」や「色の意味」を踏まえて改善した。
Tips 14: いらすと屋を使わない
いらすと屋は便利だが、安っぽく見えてしまう。 ここは担当者の好みもあると思う。 私個人の好みとしては、500人の前で登壇するときには、もう少しハイカラな感じにしたい。
例えば、上記のスライドを修正すると、以下のようになる。 欲を言えばもう少し余白が欲しいところだが、モダンなフラットデザインにはなったと思う。
アイコン画像は以下のWEBサイトを活用させていただいた。
初めて使った!テンション上がる!
— ゆずたそ (@yuzutas0) September 25, 2020
雑に貼り付けただけなのに、資料がそれっぽくなる!
FLAT ICON DESIGN -フラットアイコンデザイン-https://t.co/9uqZ0HZEP1 pic.twitter.com/zUdgGRyKO0
Tips 15: Special Thanks を掲載する
該当の案件に関わってくれた全ての人を紹介する。 他人の成果をまるで自分のことのように話すのはアンフェアだ。 そういう人間はいずれ周囲の協力を得られなくなる。
1人で出来る仕事など存在しない。 あくまで自分は代表者として話しているだけで、個々の成果は各担当者に紐付いている。 その人たちの転職や昇進を後押しできるようにしておこう。 その人たちが「この案件は自分が担当したんですよ。ほら、ここに名前が載っています。」と言える状態にしておこう。
なお、本人に「名前を掲載してもいいですか?」と許可を得ることが前提だ。 逃げ道として「もちろん断っていただいても構いません。親族に名前を検索されて見つかるのがイヤだという方が過去にいました。」と添えておこう。
Tips 16: 読み返す→音読する→人に聞いてもらう
必ずブラッシュアップを行おう。
- 軽く一通り読み返してみる。
- 音読してみる。
- 他の人に聞いてもらう。
話しにくい点、わかりにくい点、違和感を覚える点が1つや2つは出てくるはずだ。 そこをきちんとブラッシュアップすると 「この説明は分かりやすい」 「他の本や記事だと違和感があったけどこのスライドを読んだら納得できた」 「人に説明するときはこのスライドを使わせてもらっている」 と言われるようになる。
Tips 17: 幹から枝葉へ
手戻りを減らすために、以下の改善サイクルを回す。
- 企画趣旨をテキスト化→関係者レビュー→ブラッシュアップ
- 目次案をテキスト化→関係者レビュー→ブラッシュアップ
- 見出しテキスト+本文箇条書き+ラフスケッチを書く→関係者レビュー→ブラッシュアップ
- 本文完成+ビジュアル図解→関係者レビュー→ブラッシュアップ
- 誤字脱字&てにをは修正→関係者レビュー→ブラッシュアップ
スライド作成に限らず資料作成はいずれも似たようなサイクルを回すのが望ましいかなと思います。
文章執筆は製品開発と同じ
— ゆずたそ (@yuzutas0) 2020年5月7日
デザイン
・読み手
・抱える課題
・提供価値
アーキ
・キーメッセージ
・論拠となるエビデンス
・理解を促すエピソード
プロセス
・骨子→文章→推敲
・フェーズごとにチェック
・作業時間はカレンダー管理
と話したら「セミナーで金を取るべきですね」と言われた飲み会 pic.twitter.com/4DTMZeyoBw
最後に
このデザインTips集を見て「この人のもとで勉強したい」と思ってくださったら、ぜひTwitterをフォローしてほしい。 デザインTipsに限らず、多くの業務について日々アシスタントを募集している。
例えば、書籍出版の編集アシスタントを募集したことがあった。 そのとき手伝ってくれた方々の名前は書籍に掲載している。 出版社とのコネクション構築、実績作り、キャリアアップ等に活かせるはずだ。
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書籍の編集アシスタントを募集します!
— ゆずたそ (@yuzutas0) 2019年8月2日
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— ゆずたそ (@yuzutas0) 2020年3月5日
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— ゆずたそ (@yuzutas0) 2020年9月3日
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