この記事はDevLOVE Advent Calendar 2018 - 17日目の記事です。 開発現場で奮闘しながら綴ったポエムです。
サマリー
- HRTを大切にすることは大事だけど難しい
- 1人1人の心掛けは必要だけど、それだけでは不十分ではないか
- メンバー1人1人が(自然とHRTを抱き合えるような)プロフェッショナルであることも大事ではないか
- さらにそうしたプロフェッショナルが価値を発揮しあえるようなオープン・フェアネスな環境が必要ではないか
HRTという言葉
謙虚(Humility)、尊敬(Respect)、信頼(Trust)のことで、コミュニケーションの土台とされる原則です。 『Team Geek』という本で紹介されている言葉です。
Team Geek ―Googleのギークたちはいかにしてチームを作るのか
- 作者: Brian W. Fitzpatrick,Ben Collins-Sussman,及川卓也,角征典
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「HRTを大切にしましょう」と言うこと自体は簡単なのですが、徹底するのは難しいよなぁとしばしば思います。 24時間365日ずっとHRTの原則を徹底できたらもう聖人です。
じゃあ「どうしたらHRTを大切にできるのか」という話になります。 大きく分けて自発的要因と外発的要因の2つがあるのかなと思います。
前提:インサイド・アウト
『7つの習慣』に「インサイド・アウト」という概念があります。 内側から影響力を行使していこうという考え方です。 1つはこれだと思います。自発的要因です。
もっと端的に言うと「お互いに大人同士としてポジティブな姿勢を見せ合いましょう」ということだと思います。 チームメイト全員の良いところを見つけて素直な言葉で伝えられると最高です。
「可愛い〜」と片方が言ったら、もう片方が「え〜、xxちゃんのほうが可愛いよ〜」と言う感じですね。 改めて考えると示唆に飛んだ会話だなと関心しています。 コミュニケーションにおいて重要な役割を果たしているわけです。
人:一流のプロフェッショナルであること
もう1つが外発的要因だと思います。 特にチームメイト全員が一流のプロフェッショナルであるかどうか。
プロフェッショナルの定義は色々ありますが、端的に言うと「コミットしたことを実行する人」だと思います。 そのために「必要なスキルを苦もなく磨き続けられる(=学習習慣を備えている)」とか「早い段階で20点版のアウトプットを出す(=方向性に齟齬がないか確認する)」ような方々だと解釈しています。 とにかくアウトプットの量が多く、それゆえにインプットの量が多く1、それゆえに当たりをつける力が身につき、それゆえにアウトプットが早くなり、それゆえにフィードバックを早く得て、それゆえにアウトプットの質が高い。 そういう人のイメージです。
今年担当した某プロジェクトが最高で、メンバー1人1人が自分から仕事を見つけて「これやりました」「これどうします?」「これ懸念してます」といったコメントをSlackにどんどん投げていました。 相手が期待する前に、相手の(将来抱くであろう)期待を超えていました。 わざわざ「この人はこういうところがすごいんだ」という点を探そうとしなくても「こいつすげぇな」とつい口走ってしまうようなチームです。 自然とお互いにHRTを大切にできました。
アピールが上手いとか派手とかじゃなくて、業務として必要だからフィードバックを求めているだけ。 フィードバックの題材として「これが叩き台です」と提示しているだけ。 その叩き台が、誰かに指示される前に出てくる、しかもどんどん出てくる。 どうせ仕事のパターンはある程度決まっているのだからと、過去の経験をもとにして、今回の案件の背景を踏まえて「これでいいですよね」と先に言うわけです。
固有スキルがあって仕事の進め方を知らないメンバー、仕事の進め方は上手いが固有スキルがないメンバーは、お互いに「どうすればいいですか?」と相談しあいます。 ある分野でプロフェッショナルだからこそ、別の分野で足を引っ張らないように、素直に相手に頼ったり、自分に足りないものを補うために教えを乞えるのだと思います。 そういう姿勢を見て、お互いに好感を抱くわけです。
一流の人材だけを集めてアサインしたプロジェクトオーナーはすげぇなぁという話でした。 ここに関しては採用力が全てだと思います。2
環境:オープンとフェアネスであること
ただ、そのプロジェクトも、最初から全てが最高だったわけではなく、以下2点の要素があったからこそ「自然とHRTを大切にできる」状態になったのかなと思います。
1つ目:オープンに相談できる環境であったことです。 アラートを上げたら「物事を前進させるために必要な情報を可視化してくれた」とポジティブに評価するチームです。 抱え込んでしまうと、むしろ「次からは早く言ってください」と指摘が入ります。
2つ目:フェアネスな環境であったことです。 年齢や職種ではなく、実力と成果で相手を評価するチームです。 普段からOSSにコミットしているような新入社員は高く評価されますし、進捗を可視化できない年配のプロマネは厳しく詰められます。
で、ここから先は自己PRなのですが、上記プロジェクトのオープンとフェアネスは、他ならぬ私自身が作り上げるのに貢献したよ(成功だったよ)という感じです。
私がやったことはシンプルです。 まず、偉い人たちのミーティングに入り込んで、議事録をConfluenceに書いて、それをメンバーに共有しました。 そして、マネージャーやプロデューサーのPC端末にしか存在しない情報をかき集めて、Confluenceにどんどん上げていきました。
というのも、エンジニアメンバーがマネージャーやプロデューサーに質問するたびに「実はこうなんですよ〜」「偉い人がこう言っていて〜」と新情報が投下され、話が二転三転して、肝心の開発は全く進まず、その割にスコープばかりが膨らみ、全員がイライラしていたからです。 マネージャーやプロデューサー自身も人一倍その歪みを痛感していたはずで、だからこそ辛かったのだろうと思っています。 陰口が横行し始めて「こりゃあかん」となったわけです。
Confluenceに情報を可視化する際には、以前エンジニアリングチームを立て直したときの「ドキュメントデザインパターン」という概念をベースにしました。
議事録や資料が可視化されたことで「二転三転したのは単なるコミュニケーション齟齬やんけ!」「勝手に忖度してややこしくしているだけやんけ!」といった惨状があらわになりました。 「こういう状況が続くのは好ましくないので変えていきたい」「そのためにエンジニアチームが手伝えることはないか」という旨をオープンな場で伝えました。
そのメッセージだけで風向きが変わりました。 全員が全員、「何かがおかしい」と思いながら、目先の作業に忙殺されて疲弊して、だけど頑張った割には上手く進まなくて、思うところがあったのだと思います。 1人1人は優秀なチームだったので、そこから先は各自が正しいと思う方向で動いて、ポジティブな流れができていったというわけです。
めでたしめでたし。
まとめ
HRTを大切にするために必要なのは「まずは自分がHRTを意識すること」に加えて「チームメンバー全員がプロフェッショナルであること」と「オープンかつフェアネスな環境であること」なのだと思います。 となると次は「そういうチームをいかに作るか」と「そういう環境をいかに作るか」というのが鍵になるのだろうと思います。
チームが機能するとはどういうことか――「学習力」と「実行力」を高める実践アプローチ
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