下町柚子黄昏記 by @yuzutas0

したまち発・ゆずたそ作・試行錯誤の瓦礫の記録

フリーランスの契約書についてのメモ

遅れましたが、フリーランス Advent Calendar 2019 10日目の記事です。 ついに法人成りしました。バタバタしております。

フリーランスとして企業から仕事を受注する立場です。 自分の身を守るためにやっていることや気を付けているポイントを列挙します。

  1. まずは自分できちんと契約書を読む。
    • 疑問点は行政書士に質問。
    • 次から自分で読めるようにする。
  2. 行政書士にレビューいただく。
    • クライアントが提示した案にリスクが含まれていないか。
    • 初稿だけプロに見ていただき、2稿目以降は自分で差分を確認する。
    • 『個人開発がやりたくなる本』@mogyaさんが紹介しているテクニックです。
  3. 契約書の差分を確認する。
    • Wordで新版を受け取ったら、手動でプレーンテキストにコピペ。
    • $ diff file1 file2 というコマンドを実行して差分を確認。
    • もしかしたらGoogleDocsやGitHubで管理したほうが効率的かも。
  4. 契約期間を短めにする。
    • 例:3ヶ月単位の契約にして、お互いが合意したら契約を更新する。
    • 例:「この義務は本契約終了後1年間継続する」。
    • 何か不服があっても指定した期間だけ我慢する。
    • 互いにリスクを抑える。
  5. 途中解約時にも請求する。
    • 例:「xxxは業務委託料を、解除の対象となる契約締結時から解約時までの分、日割計算に基づき、xxxに支払う。」
    • 泣き寝入りやタダ働きはしない。
  6. 契約開始時にxx%の前払いを請求する。
    • これは相手による。契約書を擦り合わせている時点である程度しっかりしているので使ったことは少ない。
    • ひどい企業はミーティングを重ねて知見だけ取ろうとするので、初回面談以外は有償化するといった商品設計で対処するのが本質的。
  7. 期限を設ける。
    • 例:「納入後xx日以内に受入検査を完了させる。期間内に検査を完了させないときは、受入検査に合格したものとみなす。」
    • 我々がその気になれば金の受け渡しは10年20年後ということも可能、を防ぐ。
  8. 上限を設ける。
    • 例:「但し損害賠償額はxxxを限度とする。」
    • 破産するリスクを抑える。
    • リスクの高い案件は個人努力ではなく仕組みで防ぐように会話しないと本質的な解決にならない。
  9. 無期限の契約は対象を絞る。
    • 例:「存続事項」は「権利帰属」「損害賠償」「準拠法」「裁判管轄」に限定する。
  10. 双方の合意で契約を見直せるようにする。
    • 何かあった時に、過去の契約で言い合うのではなく、問題解決のために相談できるようにする。
  11. タイミングに注意する。
    • 例:権利帰属は業務遂行中ではなく対価完済時に譲渡する。
    • 支払いなしで権利だけ奪われるような契約にしない。
  12. 「報告書」を成果物にする。
    • 労働時間で契約しない。 あくまで「想定時間」に留める。 労働集約の発想から身を守る。 契約のために残業するのでは本末転倒。 短時間で価値を出したい。
    • コントロールできない成果で契約しない。 仕事として成果にはもちろんコミットする。 しかし、契約書は効力が強すぎる。 Nice to have ではなく Must だけを書く。
  13. 他社への横展開を可能にする。
    • 例:「同様のシステム構築・運用に共通して利用されるノウハウ・ルーチン・モジュール(従来より権利を有していたもの及び本件業務で新たに取得したものを含む)に関する権利はxxxに留保され、これを利用して類似のシステムを構築・運用することができる」
    • 作業と時間を切り売りするのではなく、用意した商品パッケージを導入してもらう。労働集約の作業ではなく、スケール可能な商品を取り扱う。
    • 商品を充実させるために、自費でアルバイトを雇ったり、他の提携企業と実験案件を経ていることが前提。

ざっくりこんな感じです。 後から気付いた点などあれば加筆・修正します。 他のTipsがあればぜひ教えてください。

この記事の内容はあくまで参考程度にご利用ください。 最終的には担当の行政書士・弁護士にご相談いただいた上で、ご自身の責任のもとで判断いただけると幸いです。

追記:交渉の実務について

この記事を見たフリーランスの方から「どう交渉すれば良いのか」と相談を受けました。 そこで私がどのように対応しているかを記載します。

と言っても、やることは単純です。 クライアント企業からメール(もしくはチャット)で契約書の草案をいただいたら、以下のように返信します。

契約書の草案を確認しました。

> 11条. 損害賠償を支払う。
「ただしxxxを上限とする」旨を追加してください。

> 12条. 損害賠償を支払う。
「ただしxxxを上限とする」旨を追加してください。

上記の点を修正いただくことは可能でしょうか。
ご検討いただけると幸いです。

これだけです。淡々と進めるように心掛けています。

話がこじそうであれば、担当者と対面や電話で会話して、論点を整理しながら落とし所を擦り合わせます。

交渉力がモノを言う世界です。 このブログでも「交渉」を説明したことがあるのでぜひ参照ください。 小手先のテクニックを身につける前に、原理・原則を理解することを強く推奨します。