下町柚子黄昏記 by @yuzutas0

したまち発・ゆずたそ作・試行錯誤の瓦礫の記録

社内政治を通してデータ分析の精度を上げる

この記事は、データ活用 Advent Calendar 2018 - 13日目の記事です。

最初に結論

ステークホルダーからフィードバックを得ると、様々な因子を洗い出すことができる。 結果として、より筋の良い仮説を立てることができ、データ分析の確度が上がる。 それゆえに社内政治は、データ分析の精度向上の有益な手段となるのではないか!

もくじ

注意点

  • ポエムです。データ分析関連の飲みの場で盛り上がったネタなので投下します。
  • ステークホルダーは最低限の論理的な会話が成り立つ人物であることを前提としています。想像を絶するほど言葉が通じない人間や組織は現実に存在するので、そういう場合は早く逃げたほうがいいですよね。
  • 金融機関のクオンツやアドテクの配信最適化のように、最初から最後までデータだけで完結する世界の仕事には当てはまりません。分析というかデータマイニングですね。その手の仕事であれば社内政治という言葉を使う余地はないんじゃないかなと思います。「社内政治とデータ分析」という言葉にピンと来る人のコンテキストを前提とします。
  • 本来はデータ分析という業務自体が「統計解析に集中する人」「データを整備する人」「分析をディレクションする人」といった感じで役割を分担しうるものなのだろうなとは思います。本エントリーで「統計解析に集中する人」を否定する意図はありません。

前提

データ分析とは

推論と予測とあるけど、まとめると y = ax + b みたいな近似モデルを作ることだと解釈できます。 ある要素と別の要素がどのような関係にあるのかを紐解く行為だと言えます。 どの広告媒体にいくらのコストを投下したら、どのくらいの顧客を獲得して、どのくらいの売上になるのか、といった具合ですね。

社内政治とは

ステークホルダー全員から「それで行きましょう」という合意を得ることだと言えます。 合意形成に失敗すると、必要なデータを得られないとか、分析結果がアクションに繋がらないといった悲劇が起きます。 その辛さを味わった人は「この組織には社内政治が必要だ」と言いたくなってしまうわけです。

足を使わないデータ分析のあり方

手元のデータをこねくり回して統計ソフトを叩くわけですね。 いわば職人のように閉じこもって新事実を発見するサイエンティスト。 データ分析という言葉から多くの人が最初にイメージするのはこの姿ではないでしょうか。

足を使うデータ分析のあり方

必要なデータを得るために関係部署に声を掛ける。 仮説の筋が良さそうか、解釈や予測結果が妥当と言えるか、業務に詳しい人に相談する。 まるで営業のように足繁く現場に通うスタイルです。

分析には仮説と検証が必要

『バッタを倒しにアフリカへ』という本があります。面白いです。 文字通りバッタを研究するためにアフリカに滞在した話です。 極端な例ではありますが、それゆえにこの本から学べることがあります。

科学者(サイエンティスト)が研究する流れは

  • 観察して仮説を立てる(砂漠のバッタは高めの植物にぶら下がっている→天敵から逃げやすいからでは?)
  • 実現可能な検証方法を考える(高い植物がない地域と比較したら?群れで天敵を恐れない状態と比較したら?)
  • 必要なデータを取る(アフリカを走り回って記録)

ということで、いずれも研究室に閉じこもるよりも、現場に出向いたほうが筋の良い結果になるんじゃないかということです。1

バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)

バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)

合意を得るくらい情報収集をする

話を戻します。 データ分析に限らず合意形成を行う際にはステークホルダーの利害関係を確認・調整することになります。

実際に何をやるかというと、内容自体は「研究の進め方」と同じです。 ステークホルダー1人1人の立場や情報を洗い出すのです。 まるでアフリカ中を走り回ってバッタを観察するように。

分析屋は何を分析するのか。 ステークホルダーの誰かがアクションを取るための予測。 あるいはすでに取ったアクションにまつわる推定。 そういうデータ分析をするわけですよね。

手元のデータだけだと y = ax + b という分析結果になる。 だけど担当者にヒアリングすると、新しい情報を入手して y = ax1 + bx2 + c というモデルに刷新できる。 持っている情報量が増えることで、仮説やモデルの精度が(解釈の説得力が)上がるのではないでしょうか。

仮説構築のための情報収集、実現可能なアクションの検討、分析に必要なデータの収集。 サイエンスのステップを踏むためには、業務の担当者へのヒアリングは避けて通れないはずです。 そして情報を引き出すにはそれなりにコミュニケーションを取らざるを得ないのではないでしょうか。

そのコミュニケーションを通して必然的に合意形成ができるのではないかと思います。 筋の悪い仮説にもとづいて分析を進めようとすると、担当者から「それは違う」といったツッコミが入るはずです。 「なぜ違うのか」と深堀ると、新しい事実が見えてくるか、あるいは単に担当者の思い違いであることが可視化されます。 その情報収集を突き詰めていくと「その通りだね」と相手が同意するところに着地するのではないでしょうか。

意外な因子を洗い出す

業務と無関係だと思っていた部署から反対意見が出ることもあるでしょう。 ついつい「これだから社内政治は面倒臭くてクソなんだよ」と言いたくなります。

が、その場合は「関係する因子を洗い出せていなかった」と好意的に解釈できないでしょうか。 予期せぬバッタの行動を目撃するようなものかなと思います。 むしろ「新しい発見のチャンスだ」とポジティブには捉えられないでしょうか。

あらゆる業務は繋がっているものです。 ある部署のアクションが他の部署に影響を与えるのは、よくある話だと思います。 そういう一見して分かりにくい事実を探り当てることは、むしろデータ分析に期待されることの1つだとは言えないでしょうか。2

表面的な分析だからツッコミが入った。 正確なインサイトを得るためには、そっちの部署についても深堀る必要がある。 それならあっちの部署も。 だったらこっちの部署も。 そんなことをやっているうちに、結果として必要なステークホルダーと合意形成はできるのでは、と思うわけです。

まとめ(再掲)

ステークホルダーからフィードバックを得ると、様々な因子を洗い出すことができる。 結果として、より筋の良い仮説を立てることができ、データ分析の精度が上がる。 それゆえに社内政治は、データ分析の精度向上の有益な手段となるのではないか!

だから?

どんどん足を使っていきましょう!!!

最強のデータ分析組織 なぜ大阪ガスは成功したのか

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  1. ちなみに私の指導教授はこのスタイルで、各国の金融機関にヒアリングして実証データを得て論文を書きまくっていたので、私の中では一流の研究者と言うとこのイメージでした……。

  2. まぁ実務上はデータで解析するよりもヒアリングベースで動いたほうがこういうのは早そうだと個人的には思いますけどね。